徒労に賭ける

2025年


― その1 ―







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何度もやったタイヤの取り付けを合間にやっといて、
大急ぎで薪割りをして前日までに荷台に積んでおいた状況です。
年のせいか、以前よりも作業が体にこたえてるような……。
まあ、これはしょうがない。
その作業を少しでも楽にするために中古農民車を買って、
地道に直しているわけなのですが、いよいよ試運転を兼ねて
積載状態で動かしてみます。
さあ、ブレーキはちゃんと効いているかなあ。





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手で軽くブレーキペダルを押したかぎりでは、液漏れはないようです。
それよりなんだかタイヤのへこみ具合が不安。
あんまりひび割れが目立つので、空気を入れるとき、バーストしないかと
びびって充分に入れてないのでしょう。。
もともと何キロで入れたらいいのかわからなかったし…。

積載で一日置いても空気は抜けていなかったので、大丈夫のはず。





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どうでもいいですが、例の場所にはまたドロバチが巣を。
忙しくて慈悲の心も薄れてきて、このまま使用します。
どうにも救いようがないし、なんとか成虫になるまで
我慢してくれたらいいですが。





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走行中、ブレーキを踏んでもなんだかフワフワして
効いてる感じがありません。
配管中にエアを噛んでるのかな、しかしエア抜きはしたはず。
クラッチとサイドブレーキで速度調整しつつ、薪棚のすぐそばまで
走る…いやの一速と二速でノロノロ移動してエンジン停止。
後輪の内側を見ると…あああ、やっぱり漏れてる。
この漏れてる位置だと、フレアナットの締め込みが
足りなかったのかも。試しに増し締めしたら、一回転以上回ったので、
漏れなくなるかもしれませんが…。
しかしフットブレーキかけるよりもクラッチを切りながらのほうが
動きやすいんだよなあ、一速だと…。

試しに、下り坂を前進一速で降りてみましたが、
エンジンブレーキはちゃんと効いていました。
ディーゼル車はエンジンブレーキが効きづらいという話ですが、
農民車程度の軽さと一速なら、十分に下り坂の加速を抑えられます。
遠いところまで移動するならともかく、
家の周りを半周する程度のことなら、フットブレーキに
それほどこだわらなくてもいいのです。
というわけで、ブレーキフルードを再充填しての点検確認は
また今度にします。
やってる時間がないんですよね。





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途中の道の真ん中に、なんか落ちてました。
この幅…もしやVベルトの一部では?





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エンジンから動力をプロペラシャフトに繋ぐ三本のVベルト。
案の定、対応年数が切れて帯が剥がれてます。
サクラの枝で一本押してみると、三センチくらいは動きます。
やれやれ、よくこんなのでエンジンブレーキがかかったもんです。
坂道でこいつが切れたら大変なので、こっちはとにかく
早く交換しないといけません。
しかしですね……。





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以前にもどこかで書きましたが、
このタイプの農民車は、駆動用Vベルトのテンションを
エンジンごと左右に移動させることによって調整するという、
とんでもない方法をとっています。
エンジンの下には二本の角材が平行に固定してあるのですが、
この農民車のは一部分が欠損したままで、恐ろしいことに
番線でエンジンを固定してあります。
したがって、番線を全部ほどかないとテンション調整ができない。
ということは、ベルトの交換もできないってわけです。
いや、あの緩さで動力が伝わるんなら、このままで
なんとかベルトが装着できそうですが…。

見づらいですが、番線1.と2.で角材と車台を固定しています。
1.が前方に、2.は後方にずれているのがわかりますでしょうか。
したがって、このエンジンの回転面とプロペラシャフトのプーリー回転面は
角度がずれているまま…。
黄色い線で示したのが、欠損した角材とそれを留める金属板の図です。
金属板を3.のボルトで締め付けるのですが、どうも金属板と
角材はボルト接合ではなく、本当に押さえているだけ、らしいのです。
向かって右側・エンジンのむこうにその金属板が見えています
でしょうか。押さえているだけで固定しているんですね。

非力なエンジンとはいえ、こんな重量物をこの固定方法で
可動させていいものなのか、私にはわかりません。
でもまあ、農民車はそうやっていままできたんですから、
それでいいのでしょう。
それにしてもこの金属板、よっぽど固いもんでないと
曲がっちゃうなあ。
拾ってきた板バネでなんとかなるといいけど…。





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薪の運搬が終わって、定位置に駐車してから
エンジンを真横から見たところ。
手前の固定ボルトが車台に対して垂直だとすると、エンジンが
少し後傾しているのがわかります。
原因は、角材の後ろのほうが欠損して、高さが足りないせい。
そのために、板バネのようなものを何枚(もしかすると、この何枚かに
固定用の金属板が含まれる?)か重ねて下に敷いてあり、
それも番線で固定してあるのです。
そんでもってエンジン全体が後ろ方向にずれているので、
Vベルトのカバーにはずみ車が接触しそうなほど。

以前からわかってはいたことなのですが、
Vベルトを交換する前に、これらの問題点をなんとか
しておきたいものです。
まず角材を二本新調して、エンジンをできるだけ清掃してから
番線を解いてエンジンと車台を分離、車台を塗装して
エンジンを完全に清掃。角材をエンジンに取り付けて
車台にエンジンを固定する……ってな順でしょうか。
こんなこと一年でできるかまったくわかりませんが、
とにかくいまは薪割りが先。
春先までこのまま無事で動いてくれるよう祈ります。








― その2 ―








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前回更新時に運び終えた薪。
さらにその後にもう一本、樹齢二十五年のクヌギを一本
切り倒し、巻き添えで折れたカシの枝なんかも含めてちょうど
荷台に一杯分の薪を満載して坂道をのぼり、
今日の午後に薪棚積みを終えたところ。
続いてもう一本、クヌギを切り倒しておきたいところですが、
あいにく風が強いので取りやめ。
木がどっちに倒れるかわからないのです。
中途半端に時間も余ったので、荷台の後部アオリ…煽ることは
できないので正確な名前ではないと思うけど、どう言ったらいいか
わからないのでアオリという…の修理をすることにしました。
縦の角材二本に薄い板を打ち付けてあるだけの
単純なものなので、とくに考えることもありませんが、
角材も板も劣化して強度が低くなってます。
修理前の写真を撮り忘れましたが、以前に載せた写真を
参考までに。





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…あんまりボロに見えませんが、差し込み部がチビてガタガタだし、
角材が弱って釘では何本打っても緩みがちです。
ちょうど手頃な木の杭(使い古し)があったので、差し込み部を
ノミで削って角材だけ取り換えました。





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電動ドライバーの手前にあるのは、磁石で集めた錆釘。
むこうにも何本かありますが、これだけの板を留めるのに
二十本くらい使ってました。
釘はあきらめて、ジャンク品の頭が大きいタッピングビスを使用。
たった六本で充分な強度が出ました。
差し込みのガタも最小限になったし、だいぶ気分よく使えます。





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以前に空気を入れ直した後輪ですが、どうもかなり足りなかったようで、
薪を満載したらタイヤの厚みが半分くらいになっちゃいました。
これはいかん、しかしまた空気を入れることができる場所まで行くには
またこの重いタイヤを外して運ばなければならないので、
車載用の簡易ポンプを使うことに。
近頃の乗用車は、軽自動車でもスペアタイヤの代わりに
シガーソケットで動かせるゲージ付きのポンプがついてて便利です。

空気圧を測ってみると1キロほどしかありませんでしたので、
2キロ入れてみましたら、ちょうどいい感じ。
走ってもだいぶ乗り心地がよくなりました。
しかしタイヤのサイドウォールはとうに限界を越えてて、
カサブタのようにボロボロ。一部、中身が見えてるところもあります。
いずれは替えなきゃなりません。
まあ覚悟はしてましたが、また出費がかさむなあ…。




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まだ少し時間があったので、灯油でエンジンを拭いてみました。
本格的に掃除するといろいろ部品は外さないといけないので、
あくまでざっとです。

ライトの取り付け部には、もとはエンジン吊り上げ用の輪っかボルトが
着いているらしいのですが、ありません。
エンジンを取り外すにはどうすればいいか?
なんとなく、すぐ下に降ろすだけなら一人でできそうな感じ。
40キロくらいだといんですけど。
あ、でもまた上に上げるときには無理か。
同じ高さの台を作ってずらすとか…。
吊り上げられればいちばんいいんですが。

燃料ゲージと燃料フィルターの透明部は真っ黒で、
どうやっても外側からではきれいになりません。
手前の赤い筒は湿式のエアフィルターで、外側に
必要オイル量の位置が記されていますが、
中身はほとんど残っていませんでした。
どんな油を入れたらいいのかわかりませんので、
また調べます。

エンジンの下にある二本の木は「木台」というらしいですが、
どんな材質の木なのか不明で、ネットで調べてもわかりません。
まあ、タモとかカシなんかでいいと思うんですが…。
ちゃんと測ってみると、45×70×750くらいは必要みたいで、
カシは家の裏に生えてますが、
まっすぐな材にするためには、チェーンソーでは無理。
仕方ないので買わないといけません。
またまた出費が…。





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クボタオートディーゼル
〄認可番号4207
連続定格出力5PS
回転速度2200rpm
ER50-N1
最高出力6.5PS
行程容積
396㏄


SR400は24馬力で6500回転も出るのに…。
まあ目的が違うから比較するのも無意味か。

分解整備する際には、正規の説明書が欲しいところですが、
いまのところオークションにも出ていません。
ま、他の似たような型のやつでも間に合うでしょうが…。





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1.の穴には、アクセルレバーがついていたものと思われます。
農民車の場合は運転席から操作しないといけないので、
2.のワイヤーによってハンドルポストのレバーから
操作できるようにしています。
当然ですが、アクセルレバーを動かすと
1.の穴も動くようになっています。
こういう使われ方を想定して、ちゃんと取り付け部分が
あるのかもしれません。

おそらく、ロクにメンテナンスもしてないしでしょうから、
ぜひともオイル交換やフィルターの掃除はしておきたいところです。
それにしてもこの悪条件と年式でちゃんと動くんだから、
サバイバビリティ―はたいしたもんだと言わねば
ならんでしょう。







― その3 ―








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いきなり

「なんじゃこりゃ?」

と、驚かせて申し訳ありません。
上の図は、私が子供のころに地元の海岸で見た記憶をもとに描いたもので、
漁船を砂浜に保管しておく時に使う「ソロバン」という道具です。
このローマ数字のⅡみたいなのを波打ち際から並べて、
その上で船を滑らせて移動させるのです。
当時の漁師さんが乗っていたのは木製の漁船。
漁を長い間しない期間、あるいは大風が吹く時などには砂浜に船を揚げておかないと
船体が腐ったり、風で隣の船にぶつかって破損したりしかねないのです。
この揚陸作業を方言で

「ふねのぼす」

などといいました。

コンクリートの垂直岸壁があり、船体がFRP製だと、わざわざ陸に揚げなくても
破損や腐りの心配をしなくてもいいのですが、まだなかった時代でした。






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漁師さんは、だいたい一家に一隻の船を持っていて、各々十枚くらいのソロバンと巻き揚げ機を
所定の場所で使用できるように決まっていたようです。
船は並べられたソロバンの上を音もなく滑って、海から上がったり海に降りたりします。
彼らは漁具の多くを自分で作っていました。船体や錨なんかも、
地元の造船所や鍛冶屋でオーダーメイド。
造れないのはエンジンやスクリュー等の複雑で精巧なもののみだったと思います。
そのへんは農民車も似たようなものですね。

ええと、なにが言いたいのかというと、今回、農民車のエンジン用に木台を作り直さないと
いけなくなったので、その木をどうして入手しようかと考えていた時、

「そういえば、親父がたしかソロバンを作ろうとしていたな…」

てなことを思い出したのです。





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で、上の写真がそのソロバン用に実家の倉庫で保管してあった角材。
どうやら海で拾ったものらしく、海にいる虫に食われた穴がいっぱい開いています。
実は一緒の場所にソロバンとして完成したのもあったのですが、そっちはシロアリにやられて絶望的な
状態。倉庫の柱が被害にあうといけないので、即、焼却処分。
マシな部分が使えるこっちを選びました。
もっとも、こっちにもシロアリが移っている可能性はあるので、
ウチに運んでからは廃エンジンオイルに漬けておいたのです。
一週間ほど経過したのですが、あんまり浸み込むことは
なかったようです。

これがなんの木なのかはわかりません。
亡父は木の種類にこだわる人で、漁の道具の柄に使う水に強い枝もいっぱいありました。
非正六角形断面と長方形断面が連なったソロバンのホゾを、ぴったり合わせる技には驚嘆したものです。
造船所で造るFRPの新造船も、自分で出来る限り造るぐらいで、
ソロバンに使う木は、とうぜん腐りにくく強い木を選んだはず。
寸法は150×150×1000くらい。
なるべく節のない、虫食いのない個所を切り取って
木台を作ります。





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…と、いうわけで半日ほどかけて作ってみました。
木の材質はすべすべして緻密、木目はさほど目立ちません。
杉やヒノキよりは硬くて重いのですが、樫よりは柔らかく軽い感じ。
いま破損している木台は、把手部近くに取付穴があるせいで
強度が落ちて折れたのでは…と思ったので
全長を十センチ以上長くとり、
45×65×750としました。
両端の把手部は指三本でしか掴めませんが、使うことがあるとも
思えなかったので、太い部分を増やして強度を優先。

とりあえず形になったので、このあと廃エンジンオイルを塗りたくって
干しておきます。シロアリが中に残っていても窒息か中毒死するでしょう。

そうそう、肝心のソロバンを並べるための浜は、親父が新しいFRP船を持つころには、
埋め立てられて垂直護岸となり、揚げる浜もなくなりました。
せっかくのソロバンも用がなくなったのです。
そんなわけで、これも親父の供養になるかもしれません。

ボール盤がないので、穴を垂直に開けられるか心配ですが、
それはまた今度にします。

今度はエンジンをどうやって降ろすか考えなきゃなあ…。







― その3 ―








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ええと、作業が滞っていた弁解をするための写真を消してしまい、
前置きなしで今回の作業を説明します。以前にアップした写真・250222-6と
構図もサイズもはぼ同じです。今回作業はいよいよエンジンの取り外し。そのためにはまず、
たいしたことはない電装品のハーネスとアクセルにつながるワイヤーケーブルを外しておかないと
いけません。そこで1.のアクセルワイヤーを外すために、前に留めてあったクボタディーゼルのプレートを
外したのが上の写真。1.と2.のボルトとナットをゆるめればワイヤーは外せそうですが、
3.の銅線がどこに繋がってるのかわかりません。これはライト用のスイッチに続いているので、
たぶん発電機につながっているのではと思うのですが……。





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仕方ないのでエンジン側で外すのはやめて、ハンドル側でスイッチごと外すことに。
アクセルレバーとライトスイッチは、同じようなバンドで固定されてます。
4.のアクセルは止難なく外せたのですが、5.のライト用はプラスネジが完全に山が
なくなってて、ドライバーがまったく効きません。
カラスプライヤーでネジ頭を掴もうにも、バンドの折り返しが邪魔で掴めず。
うーん、こりゃまいった。
ステーを兼ねたパイプには例によってドロバチが泥を詰め込んでるし。





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あれ、6.が抜けてるな…ま、気にしない気にしない。

仕方ないのでまた方針転換して、銅線の途中を外すことに。
7.のライトへ向かう二本の銅線はギボシ?カプラー?があって、引っ張るだけで
外せて、また繋ぐことができますが、8.の発電機からのは被覆を剥いて線をくくり、
ビニールテープを巻いた粗い処理。
まるで近野が自分でやったみたいですが、むろんそんな覚えはありません。
ま、とにかく、なるべく丁寧に銅線をほどいて、配線は外せました。





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お次はいよいよ番線の切断。
いったんはねじねじ部分を逆にねじってほどこうかと思ったのですが、
異常に硬いし意味もないので、ワイヤーカッターで切断。
二重に締めてあるのと一重のが二か所ずつあって、太さもバラバラ。
曲がってるところが多くてねじねじも多いのは、締め方が下手な証拠。
まるで近野がやったみたいです。





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木台が折れてない右側は、本来のボルト固定。ボルトは21とでかいもので、
ふつうのワッシャーとスプリングワッシャーを重ねて使ってました。
積年のオイルと燃料と埃で錆も固着もなく、するりと回りました。

金属の板は、形状からして板バネを切って流用したもの。
木台が折れてなくなったのを板バネで作ろうかと考えてたんですが、
ほんとに板バネで作ってました。
でもこの方式が振動でずれることもなく、曲がることもない確実な
固定法かもしれません。





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左側は、その折れてなくなったほう。
右側の固定ボルトを緩めると木台ごとエンジンがずれるはずですが、
ぐらぐらするもののなかなか動かない。こっち側の9.がひっかかっていたみたいです。
これはパイプに通して前後の木台を繋いでいたボルト。
右側には、見えにくいところにもう一組、同じボルトとパイプが
ちゃんと残っています。が、こっちは木台が折れたときに一緒に破損した
のかもしれません。ボルト9.はぶらぶらなので、これが原因で動かないのではなく、
エンジンの振動とボルトの圧力で木台がシャーシーにめり込んでしまい、
やや凹みができていたからと思われます。

あっ、Vベルトを外すとこを写すの忘れてたっ!
Vベルトは案外硬くて、伸びしろがないのでなかなか苦労しました。
最後はエンジンを後ろに十度くらい傾けて外しました。





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で、これがあらかじめ作ってあったエンジンベンチ。
当然、ありあわせの廃材ばかりですが、おおむね予定通りの
高さなので、エンジンはずらすだけで載せ替えることができます。
移動用キャスターもどっかの廃品。
下に敷いてるコンパネも廃品ですが、これは道路に出るまでが
コンクリのガラと草地なので、応急の仮設道路です。

忘れてましたが、車軸の下にはカイモノをして前を
浮かせてあります。前輪はくるくる回る状態。
こうしとかないと、エンジン移動時に車体が持ち上がって
危なそうだったので…。





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キャスターにブレーキがなかったので、自分の体でベンチを固定して移動。
どうもはずみ車が極端に重いらしく、重心が背面に寄っています。
下から出てきたのは、折れた箇所に敷いてあった木の板と
板バネ。板バネには真ん中に穴が開いていたので、
エンジン木台固定用のものかも。





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エンジンがなくなると一気に廃車感が増加しますが、
このドンガラ状態だと錆取りも格段にやりやすくなります。
ここをまず塗装して、エンジンを載せられるまで、この秋には
やっとかないと来期の薪割りに間に合いません。

「さあ、これから忙しくなるぞう!」

いやいつもいつも十二分に忙しいんですが!





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エンジンは坂道をえっちらおっちら押して、
家の車庫まで運びました。
疲れて腕が痺れたのか、写真がブレてますが…。

まあやれやれ、これで雨降りでも落ち着いて作業できます。
ずぐ横に倉庫があるので、工具もすぐに手に取れます。
こっちも作業が進みそうだぜ。

えっと、まずこのクソ重くて邪魔なはずみ車はどうやって外すのかなあ…








― その4 ―









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本日は雨の予報ですが、いちおう仮設屋根はあることだし、
なにしろ少ない休みがある時になにかしておかないといけません。
こういう場合、ちゃんとした屋根があるほうのエンジンに手をつけるべき
なのかもしれませんが、先に車台を塗装段階まで仕上げておいて、
塗料を完全に乾燥させる間にエンジンを整備してしまおうということで、
こっちにしました。

やっておいてなんですが、やっぱりエンジンのほうにしといたら
よかったような……。

言い忘れてましたが、カメラが変わりました。
以前のどっかで拾ってきたキャノンA3300ISのズームレンズが戻らなくなり、
シャッターも押せなくなったので、予備のこれまた拾ってきた
サンヨーのDSC-X1250というのを試してみたら画像が暗くて粗くてひどいシロモノ。
たぶんセンサーが悪くなって捨てられたんでしょう。
もう拾ったのはないので、仕方なくネットで中古品を一万円以下で買いました。
ニコンのクールピクスL26。
マニュアルがないのできちんと機能してるのかよくわからないのですが、
どうにかこうにか写してます。
雨降りで光量が足りず、ブレが多くてすみません。





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もう掃除したくてしたくて仕方なかったハンドルの基部。
泥ダンゴのような状態は多くの農民車が陥っているのを見ています。
埃と油とが堆積し続けたなれの果てがこれ。
こういうのをこそぎ落とすと、普段の生活で堆積しているストレスの解消にもなります。





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まだ途中ですが、本来の複雑な形状が出てきました。
内部にはギヤオイルを注入できると思いますが、
分解は塗装が終わってからにします。
先に外側に油がつくと塗装ができません。





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ブレてます。
申し訳ありません。ストロボを使えばいいんですが、ストロボ嫌いで…。

ハンドル基部付近の車台を処理しにくいので、どうやったら分離できるのか
いろいろ観察してると、どうもこの軸受けを外せばなんとかなるんでは…と
ボルトを二つ緩めてみたら、思い通り外れてくれました。
中身はスリーブらしいのですが、これとステアリングロッドがくっついたまま
ハンドルは持ち上げて少しだけ後ろにずらすことができます。
そのままハンドルポストの角度を変えると、タイヤは動かずに
ハンドルがぐるぐる回ります。
実はタイヤをまっすぐにすると、ハンドルがちょっとだけ正面に向いてなかったので、
ハンドルポストでうまく調節できるのかもしれません。
それにしても、そのハンドルポストの固定はこの軸受けだけ。
これからはあんまり負荷をかけないようにしないと。





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これだけはちゃんと記録したかったので、ストロボを使いました。
今回最大の発見、こんな見づらいところに刻印が打たれています。

AT85-1291

AT85は、農民車を造っていた高島鉄工製農民車の形式名で、
おたけさんの「農民車カタログ」に載っております。

うしろ半分の1291という数字の意味は想像もつきませんが、
もしかして製造順か…?
以前紹介した、神戸新聞取材の野上自工では
「年間200から300台」
を製造した時期があったということですので、そうかもしれません。
しかし、いままで見てきたとおり、かなり行き当たりばったりのこの工作精度。
同じ車を十台も作れば、もっと合理的に手際よく、すっきりした造りになっていくのではないでしょうか。

それでは、たとえば製造年月日かといえば、これも不可解。
この農民車を譲っていただいた方の話から考えて、
昭和四十年以前製造のはず。
1965年もあてはまりません。
これはやはり製造順なのでしょうか。
発見があったらあったで、謎は増えますねえ。





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刻印はおいといて、次の邪魔ものはこのプーリー。
取り外さないと裏側と車台に手が入りません。
回り止めらしきボルトは見た目よりも簡単に回ってくれて助かりましたが、
中心部のクサビのようなものがビクともしません。
錆の固着かもしれないので、無理に力をかけるのはやめにして、
油をさしていばらく置いておくことにします。





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縦に溶接してある鉄棒は、奥がサイドミラーポスト、手前はエンジン固定用ボルト。
これが千台以上も作った溶接技術?
まあ、もしかしたらこれが初めての職人だったのかもしれませんが…。
板バネの基部は、それでもかなり念入りに溶接されています。
それにしても乱暴な取り付けだなあ。





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こちらは左側のエンジン取り付けボルト。
わかりにくいですが、一度短めのL字鋼ステーを溶接し、
あとから重ねて長めのL字鋼を溶接してあります。

「あ、長さが足りんかった」

ということで付け足す……。
ほんとに千台以上こしらえたの?





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しかもこの溶接のヘタさはどうだ。
いや~、これでもエンジンが脱落しないんだからなあ。





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裏側も撮ってみました。
もしかすると、長いほうの補強の意味で短いやつがあるのかもしれませんが、
長いほうは車台にちゃんとくっついてなくて、主に短いほうに溶接して
あるんですよね。
どっちにしてもヘタすぎる。
まるで近野の溶接。





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そんなこんなで、いちおう錆取りはできましたが、いよいよ雨脚が
きつくなってきたので午前中で作業中断。
塗装は後日にしますが、また錆がが出るのは必至ですので、
二度手間ではありますがもう一度錆取りします。
湿気たときに錆止め塗装しても、ちゃんと効果が出ませんからね。

やっぱりエンジンのほうをやっとくべきだったか……。






― その5 ―






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ここんとこ(いつもですが)いろいろと忙しかった……。

で、今日は半日仕事。ほんの数時間だけ時間があったので、
先週のプーリーを外すことにしました。
それにはこの中心部にあるキーを抜くことから始まるはずですが、
とっかかりが小さいので困りもの。
ひっかかる部分とプーリまでは14ミリなので、15ミリ幅の金属を
間に入れて、棒状のものを当てて金槌で叩いたら抜けるのでは、
と判断してやってみます。
納屋から探してきたのは、またまたどっかで拾ってきたL字金具。





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がんがん叩いていけば、だんだん金具が水平になっていきますが、
キーは抜けていくような気配すら見せません。
どうやら金具のほうがひずんでいくようです。
といって、鋼の15ミリはちょっと見つからず、新品に近いバールが
あったので、それを梃子にしてみましたが、やはりビクともしません。





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プーリーを抜くのはあきらめて、このまま錆取りをできるところまで
進めて塗装しようかと思いましたが、プーリーとフライホイール、それを
繋ぐ回転軸、その二つの軸受けごと外してしまえばいいのでは、と
思いつきまして、四つあるボルトを外しているところ。
ナットは17でボルトは14、供回りするので二つのレンチを使用。





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ボルトは簡単に外せて、モノは前のほうに五ミリほどずれたのですが、
予想だと下に落下するはずなのに、フライホイールの奥側で引っ掛かっていて、
なんだか軸が穴に嵌っている感じ。
フライホイールとクラッチディスクは平たい円盤で、
嵌め合いにはなっていないと想像していたので、
だいぶ意外でした。
このまま抜いてしまっていいのか、抜いたらまた嵌めるのが難しくなるかも、と
思うと抜けません。

そうわけで、おびただしい数の蚊も寄ってきたし、
時間も切れたので作業中断。
クラッチ部に変な力がかかり続けるのも嫌なので、棒と板で
受け止めておくことにしました。
面倒がらずにボルトを仮止めしといたらいいのですが、
時間がありません。

「気分はもう絶体絶命 以下次号だぜ!」

そこまで切羽詰まってはいませんが、まあとにかく
詳しい人に相談してみてから進みます。








― その6 ―








250601-1




たびたび出ている元整備士の知人に相談してみると、
やはりフライホイールの奥はスプラインが入っているとのこと。
円盤同士だけでは回転の中心がずれてしまうので、
スプラインで固定してあるのでした。

もともとは、カバーとしてここには「お釜」と呼ばれる
半球形の覆いがあるのですが、ないほうがクラッチケースを固定しやすかった
のでしょう、むき出しで埃には無力なクラッチ部です。

でも、おかげでクラッチ分離には極めて便利。
スプラインは簡単に抜けて、再び嵌めるのも簡単だとのことでしたので、
安心して抜くことにします。

が、邪魔モノがいまして、スプライン部分が抜けきる前に
軸受けを固定していた鉄の板が当たってしまいます。
これはボルト留めなので外すことにしますが、サイズが21とバカでかくて、
上の倉庫に取りに戻ります。
レンチは回り止めに二本必要。





250601-2




フライホイールの向こう側が見えました。
案の定、中身はグリスと埃とその他葉っぱやらが堆積して
まことに面倒な状況。こう奥まった構造だとディスクグラインダーも
入りそうにないので、汚れをこそぎ落とすには
手作業しかないようです。
上部の白いのは取り外し式のハッチみたいなもの。
ずっと以前に、できるところまで塗装してあります。

いままで、クラッチとは向かい合う回転軸先端の円盤と円盤が合わさることで回転を伝えるのだと
思っていましたが、だいぶ構造が違います。
こっち側(ギヤケース側)には円盤はありませんが、クラッチペダルで操作する
コンセントプラグみたいなレバーがあり、これでレリーズベアリングを
押し出すようです。





250601-3




なんだかSF映画みたいな見てくれですが、こっちはフライホイール側。
コンセントプラグ型のレバーで押されたレリーズベアリングが、三つの板バネを押して、
それがプレッシャープレート(輪っか状のもの)を押し、クラッチディスクと
接触することで回転力が繋がる、というものらしいです。
つまり、クラッチ板は二枚ともフライホイールにくっついてるということです。

……それで合ってるのかな……。
左端のスリットには、もはやすっかりおなじみのドロバチが二つも巣を設営。
今回は容赦なくマイナスドライバーで破壊除去しました。





250601-4




なんとか手作業とパーツクリーナーでここまで洗浄。
どうせ完全に油汚れは取り除けていないので、塗装はしないことにしました。
グリスとオイルを要所に塗布。

どうでもいいですが、新しいパーツクリーナーは道端で拾ったもの。
スプレーの押す頭がなかったので、前の使い切ったパーツクリーナーのを
流用して使っています。





250601-5




おお、錆を落とすとますますSFっぽい様相に。
この角度から見えるスリットにもドロバチが(以下略)。

まだまだ分解できそうな雰囲気ですが、バネがあるので組み立てに手間取りそう。
秋までに稼働できるようにしたいので、もう無理に分解するのはやめにしておきます。





250601-6




前回の錆取りから三週間は経過していて、うっすら錆が浮いた車台先端部。
このまま錆止め塗装はできないので、もう一度錆取り。そして処理しきれなかった
部分も追加で錆取り。塗装済み部分の浮き錆びも軽く取って、
ええい、ハンドルポストもサイドミラーポストもついでにやっちまえ。





250601-7




もうちょっと角度を変えて撮ればよかった…。
クラッチとフライホイールは死ぬほど重く、プーリーも負けじと重い!
しかも回転軸までもが重いっ!
重量挙げのバーベルそこのけです。持ったことないけど。

地面に置いとくわけにもいかないので、荷台で塗装することにしました。
サビサビの荷台から錆がうつらないように、木の上に置いてます。
クラッチ部分は摩擦熱が発生するらしいので、
耐熱スプレーでもかけときますか。





250601-8




今回はここまで。
水性錆止めは時間が経つと油にはじかれそうですが、
長年、鉄部に滲んでいたであろう油分が、錆といっしょに
なくなっていることを願います…。








― その7 ―








250614-1




車台先端部の錆止めをもう一回塗っておきたかったのですが、
今日は雨なので屋根の下に移動したエンジンを掃除することにします。
上面の中央部を千枚通しでこそぐだけでこれだけの堆積物が。
強度のある塗装のはずですが、傷もつきやすくなっています。
丁寧な作業を心がけることにしましょう。
まずは、ライトから始めましょうか…。





250614-2




ライトはY字型の頑丈な回転するステーに固定されていて、両脇の二本の
ボルトで角度を変えられます。
ここには映ってませんが、ステーもボルトも太すぎる気がするなあ…。
ま、ステーのほうはエンジン吊り下げ用のリングと交換できるので、
そのためもあって太いのでしょう。

ライトリムはメッキがモロモロで、サンドブラストして再メッキすれば
完璧なのでしょうが、そんなヒマも金もありませんので、
手作業のワイヤブラシ。
なるべくメッキを残しつつ錆を落とし、缶スプレーのクリア塗装。
が、湿気が多すぎたのか、乾く前になんだか白っぽくなってしまいました。
完全に乾いたら透明になってくれればいいんですが。





250614-3



ライトの裏側には点検済み証のハンコが押してありました。
日付は45.12.14。

「雪を蹴立ててさく!さく!あさくさくさくさく、先生!おおう、蕎麦屋かぁ!」

なんて歌はともかく、これはまさしく昭和四十五年の十二月十四日の印。
ということは、この農民車も昭和四十五年以降製造の可能性が強くなりました。
何らかの原因で、ライトを新しく替えたのでなければの話ですが、
私はもうちょっと前だと思ってたんです。
こうなると、車台前部の刻印に日付らしきものがないのが残念。
製作した高島鉄工では、完成日は重要視されていなかったのでしょうか。





250614-4


ガラス面は乾いた布で充分に磨けました。
内側も布を巻いた指を突っ込めば端まで届きます。
外したランプ球の表面には、

A6V
Toshiba
25-25W

と、懐かしい東芝のロゴマークが印字されています。
検索してみたところ、いまだに小糸製作所から同寸のランプ球が出荷されているようです
(二輪車用)。
でも、写真の状態からどうやって抜き取るのか、私にはわかりませんでした。
ここまで分解するのも、だいぶんと悩んだのです。
しかしまあ、1970年からずっと装着されっぱなしとすれば、
今も点灯するのですから、高品質このうえない電球ですね。

下のライトレンズには、

TOP
S-0265
ISHIKAWA

とあります。
イシカワという会社名は、点検済み証のハンコに最後のワの字がうかがえます。
こちらはライトレンズのメーカーとして検索してもヒットしませんでした。
残念ながらいまは存在しないのかもしれません。
いまどきガラス製のレンズも珍しいので、大事にしないといけませんね。





250614-5




左はラジエターの冷却水補充口にあったフィルター。
銅製のようですが、継ぎ目が裂けかけていたのであまり掃除してません。
そうそう、ゴムパッキンは出てくるたびに軟化剤を塗っています。
左はその蓋で、

←REMOVE SLOWLY←
アツイトキ キケン
0.9

などとあります。
0.9は内容量でしょうか?
これもメッキが危ういので、なるべく布で磨いて終わり。





250614-6




その冷却水は、恐ろしいことに水面が目視できません。
底のほうには残っててほしいのですが…。
いままでエンジンが熱くなるほど動かしたことがなかったのが幸い。
冷却水のことなんかすっかり頭から抜けていました。水位はどうやって見るんだろ?
中身まで掃除できればいいんですが、どうなるでしょう。





250614-7




1.の部分はへこんでいるのでゴミが溜まっているのですが、2.の赤いカバーを
外さないことにはちゃんと掃除できません。どうやら横のカバー3.と
4.のボルトで共締めとなっているようですが、茶筒型マフラーが邪魔っぽい。
これを外すには5.のフランジにあるボルトを二本、外せばいいようです。
このへんは、文句なく一番汚れている部分。
タイガーモス号の厨房に踏み入るシータはこんな気分かなあ。





250614-8




フランジボルト7.は、思ったより簡単に緩みましたが、まだカバーは動きません。
一旦外したボルトは、なくさないように仮止め。
どうも6.の、クボタディーゼルのシールが貼ってある小さなカバーが邪魔していたようで、
それもあらかた磨いてから外します。
手で持って磨くより、動かないものに固定してあるほうが
磨きやすいのです。





250614-9




表側は「クボタディーゼル」のプレートが長短のボルト留め。
ラジエターの保護網が四本のボルト、カバーそのものは長いボルト四本で固定。
カバー周りはすべて9のボルトでした。
外したボルトも磨いています。





250614-10




8.エンジンカバー前固定ボルト四本
9.ラジエター保護網とボルト
10.クボタディーゼルプレートとボルト
11.茶筒型マフラー
12.エンジンカバー後ろ側のボルト三本

やっと外れたエンジンカバーは、天地逆にしてラジエターの上に
のっけてある状態。
細かい部品がいっぱいなので、この作業はやはり下の駐車場では
やらないのが正解でした。絶対になにかを失う自信があります。
そしてこうやって分解工程を記録しておかないと、絶対に組み方を忘れる自信があります。
ゆっくり落ち着いてやらないと。








― その8 ―






仕事は休みだけど、午前中に健康診断。
胃カメラが嫌いな近野は毎年バリウムを飲むのですが、
検査後に排出するために下剤を服用しなければなりません。
したがって、不意の便意がたびたび発生するので
あんまり動きたくないのですが、一時間でもエンジンに手を付けます。
一時間で掃除できそうな箇所はと…ラジエーターの冷却ファンか。





250621-1




ラジエーター冷却ファンは1.の赤いカバーがついた奥にあります。
赤いカバーの中央にはクボタの歯車マークがついていますが、
これは二本のボルトを緩めて外します。
Vベルトは手前のプーリーに繋がっていますが、
途中でフライホイールの軸にあたっていて、
それでVベルトを動かしているのだろうか…?
というのは、手前のプーリーはただ単体のプーリーで、
Vベルトを外すと空回りするばかり。
外すことに夢中になって、どういう動きをするのか確認するのを
忘れてしまいました。また今度、確認しておくことにして、
話を進めます。





250621-2




ボケボケですが、組み立て時の復習(予習?)を兼ねてボルト穴の説明をしときます。

2.ラジエーターカバーの固定ボルト用
3.歯車クボタのVベルト&プーリーカバー用
4.ラジエーターファン本体用

4.は三本でおしまいかと思っていましたが、フライホイールの陰にもう一本ありました。





250621-3




その最後の一本を抜いたら、ファン
本体も外れましたが、なにかが引っかかってる…。
ラジエーターと燃料タンクの隙間から前面に配線5.が通っていました。
これはハンドル近くにあるライト用のスイッチに通じる配線ですが、
いったん前に出て、気化器とマフラーの内側を経由してから
ハンドルに向かいます。
おそらくファンから直接ハンドルに行くと、フライホイールやVベルトに
触れてしまう危険があったためでしょう。





250621-4




ということは、このラジエーターファンは発電機を兼ねているのでしょうか。
ファンの汚れを取っていくと、

SAWAFUJI  ELECTRIC CO.
5000-8000.P.M.→
TYPE AGM26    NO ?

などとあり、澤藤電機はいまもオルタネーターやバス用の小型冷蔵庫なんかを
造っているようです。やはりこの羽根車のなかには発電機があるのでしょう。

固定する四本のボルトは、四連の回り止めナットで締めてあります。
爪を曲げて回り止めとするので、やりたくないですがスクレーパーで
爪を起こしてからボルトを緩めます。
反対側のプーリーを固定するナットは、ファンが供回りして外せませんので…。
再びボルトを固定する際、どうか爪が折れませんように。





250621-5



ファンの羽根や発電機のステーは、
断面が飛行機の主翼と同じになっています。
冷却効率をここまで重視しないといけないなのか私にはわまりませんが、
なかなかカッコいい、凝ったものです。
もうちょっとキレイにしたかったのですが、
夏至とはいえ暗くなってきたし、拾ったパーツクリーナーも
ちょうど中身が無くなってしまったので、
ここで今日は終了。
また仮組して保管しておきます。

下痢は、なんとかもよおさずにすみました。









― その9 ―








250706-1




「申し訳ありません、ご婚礼衣装の仮縫いでございましたので、
男どもが席を外した折でございました。」

花嫁脱走の不始末ではなく、またブレブレ撮影の不手際をお詫びします。

前回、パーツクリーナーがなくなったので購入しなければ、と
書いたのですが、よく考えるとこの手の油汚れは灯油があれば
充分に落とせることを思い出しまして、古歯ブラシと薪ストーブ導入以前に
使っていた石油ストーブ用の灯油を使うことにしました。
はじめっからこうすればよかった。
ラジエーター水タンクの表面をまず洗ってみますが、
もともとの塗装がどうだったのかよくわからず、どこまでブラッシング
すればいいのかもよくわかりませんが、まあキレイにはなっているみたい。
でも、手前の赤い燃料タンクを外さないことには
ラジエーターが存分に洗えないのは明白。
どうにかして燃料タンクを外さないと。

それにしても、石油ストーブの時代、我が家は寒かった……。





250706-2




ふたたびブレブレ…。

赤いタンクを手で押してみると、ちょっと動きます。
どうやら、1.のふたつのボルトで固定されているっぽい感じ。
ラジエーターカバーとライトなどを固定する長いボルトが燃料タンクも
固定していたようで、残ったのが1.のボルトらしいです。
二つを繋ぐ細長い板は緩み止めで、端を折り曲げてあります。

タンクの外し方はおおむねわかりましたが、
その前にまずタンク内に残った燃料を出しておかないといけません。
中身は目測で約二リットルくらいあります。
写真で左手にある正面には、どうもドレンプラグみたいなものがないので、
黒い筒状の燃料フィルターを外すことで燃料を抜くことができると見ました。
ということは、抜いた燃料用に二リットルの密封容器を用意しとかないと。
それとジョウゴ。
ゴミ捨て場で蓋つきのコーヒーボトルを何本か拾ってくるか…いや、どっかに
エンジンオイルの空缶があったかなあ。

ま、それは置いといて、固定してたほうが汚れを落としやすいので、
できる範囲を歯ブラシで洗っていきます。





250706-3




洗っている途中で、黒い筒状燃料フィルターに
なにか文字が書いてあるのを発見。
シールなのか、シールの文字が長期の紫外線でフィルターに印字されて
しまっているのかわかりませんが、燃料パイプの途中に
エアーを噛んでしまった際の対処法を書いてありました。

注 意

エアー抜きは次の順序で行って下さい
エアーは完全に抜けます
コックを開きます
この容器の右側のプラグから
エアーを抜きます
燃料ポンプのプラグからエアー
を抜きます
この容器の左側のプラグからエ
アーを抜きます
カップの底に水やごみが   れば
すてて下さい
100時間   の  中身
まって下さい
    場合は   を
  てください
            お使いください


この画像から読み取れるのはこれくらい。
エアー抜きの方法がわかったのはめっけもんです。

「光と影を……すり減っていてよく読めないな…」

斜めにいっぱい入っている傷は、どうやら私がうかつに
ワイヤーブラシを使ったときについたようです。

「愚か者!」
「お叱りは後で、きゃつはクラリス様を狙っています、お早く!」





250706-4




こっちは燃料タンク前面に貼ってあったシール。
表面の透明な膜がボロボロで、限界を越えそうです。

「ひかりとかげをむすび ときつぐるたかきひのやぎにむかいしまなこに われをおさめよ」

いやいや違う。


ラジエーターに水を一杯入れ蓋をしっかり閉めて下さい。
ラジエーターの中に泥やごみを入れないでください。
途中にラジエーターの蓋を開くと熱湯が噴出して火傷のおそれが
     ますから、機関が暑い時は開けないで下さい。
機関を停めている時冷却水が凍結し機関を破損する事がありま
すから冷却水に不凍液を入れるか不凍液を入れない時は機関休止時
必ず冷却水を抜去って下さい。
ラジエーター内の水を抜く時ドレンコックを開いた丈では中の水は
抜けませんからラジエーターの蓋も取外して下さい。又冷却水
    らぬ様、機関を前后に数回動かして下さい。
ドレンコックを開いたまま格納して下さい。
潤滑油のの油面を確めて下さい。油面は検査棒   下さい


ラジエーター冷却水と潤滑油の注意事項です。
表現と文字の選び方に時代を感じますねえ。

今回も一時間ほどしか作業できませんでしたが、油がこびりついてるからって、
うっかりワイヤーブラシは使えません、てことを学びました。








― その10 ―








250721-1




二週間もほったらかしにしてしまいましたが、
今日も暑いし時間は二時間もありません。
さてタンクの中に残った燃料を出すためにドレンコックを探していたのですが、
詳しい人に聞くとこの手のタンクにはその手の排出口はなく、
黒い筒状の燃料フィルターカップを外して排出するのだそうです。
前回、私が推理したのが当たっていたみたいですが、
出した燃料を溜める容器として、新品の燃料缶があったのを発見。
これは例によって亡父の倉庫からいただいたもの。
燃料缶はすでに持ってるのですが、それもたしか同様の出所なので、
いったい何の理由で二つも燃料缶を買ってたのか謎です。

それはともかく、推理と容器がそろったので、燃料フィルターカップを
外してみることにします。
ちょっと見えにくいですが、ジョウゴは燃料缶の
むこうがわに見えてます。





250721-2




燃料コックは閉じたままで、カップの取り付けネジを緩めます。
手では無理で、カラスプライヤーを使用。
表面張力で盛り上がるほど燃料は満たされています。
カップ自体は耐油プラスチックのようです。
ものすごく古いのだと、ガラス製だそうですが……
さすがに割れるので、ここわプラスチックのほうが実用的。
しかしこう油汚れがひどいとなあ…。
ガラスだと油汚れは簡単に落ちるんだけど、
プラスチックのタッパーでも、脂物は落ちにくいんだよなあ。





250721-3



カップの中身ももったいないので、掃除が終わったら戻そうと
思ってましたが、なんかゴミもあるので断念して、このまま
燃料で洗ってみることに。
灯油と比べてどうだろう、と思ったのですが、
軽油も灯油もたいした違いはないようです。





250721-4




汚れ落ちはなんだかいまひとつ。
カップは本来、透明で中がじゅうぶん見えるはずですが、
まったくなんにも見えませんね。
これがガラスのようにきれいに透き通っていると、
無骨なエンジンといえども気品が加わるはずなんですが…。





250721-5




そこで、どっからか拾ってきた換気扇レンジクリーナーの
スプレー缶を使ってみることに。
といっても、古すぎるので中身のガスが抜けきっていて、噴射ノズルからはまったく
なにも出てくれません。中身も少ないようなので、
横っ腹に穴を開けて洗浄液を全部取り出します。
数分間、カップを浸しておいてから指でこすると、
なんだか夏場にテープを剥がしたときに残るカスのようなものが
モロモロと取れてきて、それでも取り切れないので爪でしつこく
こそげ取っていきます。
おお、濡れてると透明度も増してくるぞ。





250721-6




しかし乾くとまたガラスとは程遠い透明度。
でもまあ、だいぶん汚れは落ちたので、良しとします。
どっちみち、エンジンを回せばカップの中は燃料で濡れるから
透明度も上がるはず。
しかし手強い汚れだなあ…金属部分はキレイなのに、
やっぱりプラスチックは油と相性がいいんだなあ。

あっ!
あの粘着剤のカスのようなモロモロは、
前回の写真250706-3で見たエアー抜きの説明シール⁉
ぎゃあああっ、
あの重要な文章をこの世から消してしまったか近野新!

…泣くに泣けない展開ですが、
でもあのボロボロのシールを残して油汚れを除くなんて、
ダビンチの絵を修復するより難しいんじゃ……。
ということで、仕方がないと思うことにします。
やでやで……。







― その11 ―







250726-1




暑い。
だが空き地の草はどんどん生えてくるので、草刈りをしないといけない。
汗みどろになって午前中を草刈りに使い、午後は自分の髪を刈る。
一週間の疲労と休日の疲労のため昼寝を二回し、
残りのわずかな時間を農民車の燃料フィルターカップに捧ぐのである。

一週間、コックを開けっぱなしにしておいたので、
少しだけタンクに残っていた軽油がカップの底に溜まっていました。
フィルターも見えているので、キレイにはなっていますが、
もうちょっとキレイにしてみます。





250726-2




前回、うっかりエア抜き方法のシールを剥がしてしまったカップ。
まだシールの残りがひっついています。
燃料は少し濁っているようで、カップ内部かフィルターに
ついていた汚れかもしれません。





250726-3




耐水ペーパー500番→800番→1500番→2000番と、
燃料を使って磨いていき、最後はホーミングとピカールで仕上げてみました。
このへんでこめかみから一筋の汗が。
シールの残りは完全に除去できたようなので、
このへんで終わりにします。





250726-4




なんか角度が変わるとたいしてキレイになってませんが…。
それなりに苦労してるんだけどなあ。







― その12 ―








250808-1




死ぬような暑い日々が続いていますが、たまたま
休みになった平日の今日は久しぶりに涼しい(といっても三十度)午前中。
このチャンスを逃さず、
車台のほうを二回目のアイボリーを上塗りしてから
エンジンのほうにとりかかります。

赤い燃料タンクの清掃をするわけですが、エンジン本体から
外さないことには、こみいった場所に手が届きません。
1.と2.が燃料チューブらしき透明な樹脂の管。
1.のほうは先がどこに繋がってるのかわからなかったので、
燃料コックをタンクから外すことで分離。
2.は、タンクにはバンジョーボルトでついているのですが、その取り付けボルトが
薄っぺらくてレンチがなめてしまうので、逆に先端側のボルトを外しました。
3.の二つの固定ボルトを外すとタンクがグラグラします。
これで外れるかな……?





250808-2




んん、まだなにか繋がってるぞ?
エンジンの裏側にも透明チューブの配管5.がありました。
これらの配管が、それぞれどんな役割を持っているのか、
私にはさっぱりわかりませんが、元通りにすればまた動くでしょう。
そのためにも、はずした部分は記録していかないといけません。
5.も先端のバンジョーボルトを外します。

三本の燃料系配管は、硬化してるものの破損はしてないようです。
しかしタンクの前面にある燃料計のチューブが取り付け部で割れているので、
交換しなければならんでしょう。
いっそ全部交換してみるか?サイズが同じだといいんですが。





250808-3




さていよいよタンクが外れるか、と持ち上げてみると、
ありゃりゃ、外した燃料コックの取り付け部から
燃料が出てきました。
どうもエンジンが微妙に傾いていたからか、まだタンクの中に
残っていたのでしょう。
たまたま真下に小皿を置いていたので助かりました。
横にある紅茶の空き缶に一本分以上。
ああ、近くにあった蚊取り線香に引火しなくてよかった…。

-その10-で、タンクの燃料は新品の携行缶に入れてましたが、
だいぶ少なかったので、あとで黒いコーヒー缶に移し替えています。
遅まきながら図書館で借りた農業機械の本によると、タンク内に空間があると
燃料が分離してよくないそうで。
かなりこぼしちゃいましたが、残った燃料は二本分になります。





250808-4




こびりついた汚れは、灯油を塗ってしばらくすると、ふやけて
取りやすくなります。しかしブラシで擦っただけだと、
灯油が揮発したらまたこびりつきます。
ブラシで擦ったらぼろ布で除去するのが正解のようで、
地道にやってるんですけども…。
なんせタンクから突起や管が突き出ているんで、うまく固定できない。
力を入れようとするとぐらつくので、擦るのに苦労します。
おまけに隙間は多いし…。
どうしても取り除けない隙間の汚れが残るので、
これはまたパーツクリーナーを買わなきゃならんのか?
バケツいっぱいの灯油に全体を漬け込めればいいんだけども、
いくらなんでもちょっと。

カメラ側に突き出た管の先端には、ネジ部にワッシャーを針金で固定。
これがひとつなくなると大変。





250808-5




このへんでまた昼に。
うーむ、まだまだ外さないといけない部分が多いが…。
外すのはいいとして、組み立てる自信がだんだん薄くなってきました。
やっぱり超強力なパーツクリーナーか…?

いっそエンジン全体をでかい桶の中に入れて、灯油にドブ漬けできればいいんだけど。
そんで自分も中に入ってガシガシ擦りまくる…!

…ま、やっぱり地道にいきますか…。








― その13 ―







とびとびのお盆休みで、今日も珍しく気温は三十度以下。
なかなか訪れないチャンスをエンジン整備に使います。
前回の続きで燃料タンクの清掃をば……。





250811-1




これはたぶん、寒冷時始動用の配管だと思うんですが…針金じゃなくて
クリップ固定だったので、それを緩めればホースが抜けるかと、
クリップをラジオペンチでつまんでホースを引っ張ったら、簡単にちぎれてしまいました。
あなたの想像する倍は硬化して、柔軟性はほぼゼロ。
また、このバンジョーボルトはなぜか緩めることができませんので、
無理をせずホースだけ抜くことに。
ボルト頭が薄いので、取り外す想定ではないのかも。





250811-2




しかもバンジョーに残ったのも、クリップを外したのに割らないと取れない有様。
クリップは再使用するとして、チューブは買わないと…。





250811-3




こっちは燃料計としての透明耐油チューブ。
上の取り付け部分が以前から割れていたので、どうでもいいやと引き抜こうと
しましたが、下のほうはペンチでは抜けないのでカッターナイフで
切れ目を入れて外しました。





250811-4




こっちは燃料を入れる口にはまっていた濾し器。
だいぶ灯油に漬け込んでいたのですが、汚れは全然取れません。
なにか別の方法で掃除しないと…。
裂け目がありますが、網の材質は真鍮のようなので、はんだ付けでも
してみようかと考えています。
まてよ、他の継ぎ目も同じはんだだとすると、
熱で溶けてしまわないかなあ。
濡れた布で巻いて、放熱するのがいいか?





250811-5




ひととおり汚れを取りましたが、汚れ落ちはいまひとつ。
灯油では溶けにくい部分もあるので、ここも他の方法を考えないと。
板の合わせ目にまだ汚れがありますが、この鉄板は溶接
してあって外せないのです。
したがってブラシが届かず、内部からどんどん汚れがにじみ出てきます。
ここはやはり、スプレー式のパーツクリーナーか。
やはり買わねばならんのかあ!

一本だけ繋がったままのホースは、前回の写真250808-2のホース。
日光が当たらないところだったせいか、柔軟性がまあまあ残っているので、
このまま使うために引っこ抜かずに置いときます。
抜こうとして割れたら怖い。





250811-6




燃料コックからきている2.のホースは、1.のレンチがかかっている
ボルトに、これまたバンジョーで繋がっていました。
こっちのボルト頭は十分分厚いので、簡単に回すことができます。
そんなことをしてたら、また一本3.の透明チューブを発見。
いま外すとややこしいので、いったん置いときます。





250811-7




2.のホースは、バンジョー側とコック側、双方とも銅線で留めてあります。
いちど交換したのでしょうか。
ギリギリの長さで切ってあるので、外すと締め直せないかも、
ということで、そのまま使います。
ボルトは洗った後にすぐ元の穴に入れときます。





250811-8




いちおうノギスでそれぞれのホースを測っておきました。
硬化変形してて正確な寸法は出てないと思いますが、なんとかなると
しておきます。それにしてもバラバラだなあ…。
なお、燃料コックからのホースにだけ、

SANYO KASEI 7039

という表記が残っていました。
検索してみると、三洋化成はいまも耐油ホースを扱っているようですが、
7039は廃版のようです。

なんにしても、ネットだと何十メートルものロールで
買わないといけなかったりするので、地元の農機屋さんか
ホームセンターか農家専門店に行ったほうがいいかも。





250811-9




次に手掛けるのは、ラジエーターかエアクリーナーか。
どっちでもいいですが、より汚いラジエーターを選びます。
これは表側なんですが、裏側についてた電動ファンは吐き出す方向に
空気を送っていたようで、裏側はそんなにゴミが詰まっていません
(前回写真250808-2参照)。
反対に、表側はおぞましいほどゴミが目詰まりしていて、
ラジエーターフィンがほとんど見えません。こんな状態だと
冷却効率は半分以下だったんじゃ……?

ここから灯油では埃に浸み込むばかりで、かえって二度手間になりそうなんで、
まず千枚通しでフィンの隙間をこそいでみます。





250811-10




おげ~、すっごいゴミ。
いったい何十年分の塵埃なんだ。





250811-11




千枚通しだけで掃除してたら、ラジエーターをエンジンブロックに
固定しているらしいボルトが合計十本。
どうやらこの四角いのを外せそうです。

エンジン全体を包むウォータージャケットがあるのかどうか、
それがどうラジエーターと繋がるのか、
なんにもわかりませんが、外せばわかるのかもしれません。
蓋の中を覗いても水面は見えませんが、内部に構造物があって
底まで見えないので、冷却水も残ってるのかどうか。

わからんことだらけですが、とりあえず昼になったので、
今日はここまで。








― その14 ―








250816-1




あっ、ついこの間に作業したばかりだと
思ってたのに、もう五日が経過…。
速い、日の経つのが速い。急がねばまた休みが終わってしまう…!

てなわけで、作業再開。
ラジエターコアを取り外す前に、できるだけ洗ってみることに。
がっちりした土台であるエンジンブロックに固定されているほうが
掃除もしやすいのです。買い物にいく時間がないので洗浄液は
灯油のまま。だいぶ時間をかけたのですが、やはりフィンの隙間には
まだゴミが詰まっています。まあこれ以上はパーツクリーナーを
購入してからにしましょう。

それにしても、黄色い塗装は下半分くらいしか
かかってないような……。どうせ赤いカバーで見えなくなるから、
適当でいいか、てな感じなのかどうか。
昭和四十年代の農機はこんなもんなんでしょうか。
まあいいけど。

とりあえず、ナットを外してコアを持ち上げてみます。





250816-2




げげええー、やっぱりやるんじゃなかった…!
「八つ墓村」に出てくる鍾乳洞のミイラくらいオゾましいシロモノが現れました。
水が一切見えず、カルキと錆が混然一体になって内壁にこびりついてます。
やはりウォータージャケットはちゃんとエンジンブロックまで
続いているみたいですが、そこまでどうやって掃除すりゃあいいんだ。
写真だとよくわかりませんけど、いちばん深いところには、シリンダーの筒が
赤錆の塊となって見えています。
シリンダーはブロックから抜くことができるらしいんですが、
そんな重整備はしたくありません。
いやしてみたいけど時間がありません。

八本もあるスタッドボルトは、折らないように
急いでオイルを塗っておきましたが、合わせ面もなかなか酷い状態。
ゴムパッキンは当然のように劣化して貼りつき、ちぎれています。
これも買ってきて作り直さないとなあ。





250816-3




ラジエターコアの裏側。

「鑑賞に堪える顔やないなあ」

小鉄も思わずつぶやく酷い有様。
ゴムパッキンはへばりつきが酷く、革鋤ではぐってもなかなか取れない
箇所も若干あり。





250816-4




おっ、でもワイヤーブラシだけでも案外とキレイになってきた…!
どうやらコアは真鍮製のようで、鉄のガワにロウ付けしてあるみたい。
腐植もあまり進んでいなかったようです。
ああ不幸中の幸い。
タンクの内部まではとても掃除できませんが、
ひょっとしたらば、八つ墓村鍾乳洞のほうもこの調子でキレイになってくれるかも。

そういうわけで、できるだけ奥にゴミが入らないように
ボロ布で栓をしといてから、鍾乳洞内の届く範囲にワイヤーブラシをかけます。
それにつけても、水が残っている気配がまったくゼロ。
ここは思い切って、ジャケットの内部に灯油を注いでみることに。
どっかにドレンはあるはずだから、開ければ排出できるだろうし、
ほっとけば揮発してしまうはず。
灯油をかければ、ちっとはキレイになる…かも。
とにかく、ドレンを探さないと。

あ、あったっ!
ラジエターコアの真下側、エンジンブロックのシリンダーヘッド側の下に
コックがありました。
ここから中の水か灯油が出てくるはず。





250816-5




ありゃ、上がってたツマミを下に向けてもなんにも出てこない?
これじゃあないのかな…。
しかしこれしか考えられんが。





250816-6




汚そうだから嫌だったけど、全体を傾けてエンジンの下側を観察。
はずみ車のほうに重心があるので、台から落とさないように…。

フラッシュを使ったのでキレイな気がしますが、目視ではもっと真っ黒。
特に木台は習字で使う墨みたいです。
それにしても、やっぱりドレンはひとつしかない。
一番黒くて四角い部分はオイルパンで、これには
表側にボルト式のドレンがあります。





250816-7




こうなったら、八つ墓村鍾乳洞から灯油を排出してみるか、と
なおも角度を加えていくと、灯油が出てきてくれましたが、なんだか他からも
じょろじょろと漏れてくるところが…。
ありゃあ、なんだこりゃ?
それはシリンダーヘッド側の燃料噴射装置や排気管などがごちゃごちゃとある
一隅で、以前から気になっていた用途不明の穴。

―その12―
250808-2

の写真にある、5.の→近くに木の枝が刺さっているのが見えるでしょうか。
ずっと以前に、また虫が巣を作らないように木の枝で栓をしといた穴です。
恐ろしいことに、この穴はこの農民車を買ったときから開いていたはずなので、
冷却水もとっくに枯渇していたに違いありません。
いままでエンジンを何回も掛けましたが、10分も連続してなかったので、
なんとか焼き付きはしなかったのでしょう。
それにしてもこの穴の栓、いったいどんなものだったのか、
なんでこんなとこに栓があるのか、
説明書がありゃあいいんですが。





250816-8




しばらくこんな感じで放置しときましたが、
投入した量の灯油はほとんど排出した感じです。
ドレンはいったいどこにあるんだろう。
それとも、あのドレンは中で詰まっているのかな?





250816-9




で、そのドレンをよ~く観察してみると…。
なんと、ツマミを上に上げた状態で水が抜けるのでした。
いや普通ツマミの方向と一緒にするやろ。
ホンマ変なコックやで。

…って、ええええっ、てことは、買う前からこのドレンコックは開きっぱなしやったん⁉
頭おかしいんかわりゃああっ!





250816-10




なんだか謎が解けてスッキリしたようなしないような、
もう疲れるので深いことは考えないようにします。
ドレンコックの穴を千枚通しでほじくってみると、
カルキと錆の混ざった粉が付着して出てきたので、やはり
内部で詰まっているようです。
それにしても、中に入れた灯油が出てこないくらい詰まっているので、相当量の
カルキと錆があるようです。
これはなんとかしないと、冷却水を入れたとしても冷却性能が
落ちるような気がします。
どうにかして、せめてドレンから排出できるくらいに掃除はしないと。





250816-11




ドレンの穴から千枚通しでほじくり出した粉が、ブラシの先端に積もってるのが
わかりますでしょうか。
粉は乾いているので、、灯油もドレンまでは浸透できなかったようです。
うーん、信じられんなあ。まさか、冷却水ドレンはこれじゃないのか…?
まあとにかく、掃除をしよう。
深く考えないように。





250816-12




灯油を上から出してる時間がもったいないので、
中途半端になるとわかってはいましたが、底面を掃除。
案の定、ここでお昼になったので、元の角度にもどして作業終了。

次はどんな謎が待ち構えているのか、
何が起きてもあまり驚かないようにします。










― その15 ―










250818-1




仕事にいったついでにパーツクリーナーを買ってきたので、
盆休み最後の休日もエンジンに取り掛かることに。
前回の続きでラジエターコアの細部を掃除するところですが、
ちょっと気分を変えてはずみ車をはずせないか、
やってみることにしました。

鋳物でてきてるこの円盤、

①②トレラー2(以下不明)  〇に地

という意味不明のレリーフがあります。
本来、エンジン本体と同じ黄色塗装ですが、搭載してから農民車を
塗装したのか、水色の塗料が吹き付けられたまま。
この円盤の裏側に、大小三つずつのナットがあって、そのうち大きいほうを
緩めると、前部の三連プーリーが動いたので、これは抜けるか?
と、ナットを取り去ってみると……、





250818-2




なんと取れたのは三連プーリーだけ。
はずみ車そのものは、見たこともないくらいでっかいナットで
固定されています。しかも緩み止めのワッシャーまで使って。
無論、こんなどでかいレンチを持ってるはずないんで、
とりあえずクレ556を浸み込ませて置いときます。

三連プーリーのボルトは両ねじになっててユルユルですが、
外しても無意味っぽいからそのまま。バネワッシャーが一個しかなかったので、
適当なジャンクを二個入れてオイル塗布。





250818-3




はずみ車の裏側。
小さいプーリーがついてて、小さい三つのナット(実はボルト)ではずみ車に固定
したうえで、表から三連プーリーのナットを使って共締めしていたようです。





250818-4




はずみ車のナットに556浸透待ちの間、パーツクリーナーで
ラジエターコアを掃除。
パーツクリーナーはすぐになくなっちゃうんで、ちびちびと大事に使います。
あんまりキレイに見えませんが、隅っこに残った油と埃はほぼ
なくなりました。しばらく乾かしといたら、どんどん汗をかきだして、
パーツクリーナーが揮発したことでフィンが気化熱を大発散したのかも。
なかなか楽しい夏の自由研究。





250818-5




はずみ車のナットですが、緩み止めのワッシャーをタガネで起こし、
レンチがないので水道工事のパイプレンチを試してみますが、
はずみ車が回転して力が入りません。
はずみ車には二か所、小さな穴があいていたので、そこに異形鉄筋を
突っ込み、エンジンの突起部に引っ掛けて回り止めにしてから、
レンチの端部を金槌で叩きます。が、これも力不足。
今度はレンチに鋼鉄のパイプを延長して、梃子を利用して金槌打撃。
たいていのナットはこれで緩むんですが、今度はエンジンの重みが足りなくて、
全体がガタガタあばれてしまい、打撃力が
うまく伝わりません。即席で作ったエンジンベッドも
ガタがきて潰れないか不安なので、このやり方はやめておきましょう。

エンジンが暴れないように打撃を与えるには、
インパクトレンチがいいのですが、対面で五センチはあるだろう
ナットにあうレンチとなると、かなり特殊では…。
金銭的に無理があるなら、このままなんとか掃除するしかないか…。
ま、とりあえずレンチとパイプと異形鉄筋を片付けよう。





250818-6




ええと、異形鉄筋が抜けなくなっちゃいました(慟哭)。
さすがは延長パイプの梃子パワー。
肝心のナットを回さず、鉄筋を曲げちゃいましたか!
金鋸で切断しようかと思いましたが、
鉄筋までタイヤレバーを差し込んで金槌でどついたら、
なんとか曲がりが治って抜けてくれました。
やでやで、いらん手間を……。





250818-7




先だって問題にしていた穴。
内側にネジを切ってないので、ゴムの栓かなにかを
差し込んでいたのか…?いや、その内側は成型が荒れすぎ。
ひょっとするとメクラキャップかなんかかも。
あとで寸法を測っとこう。





250818-8



はずみ車とメクラキャップはこっちに置いといて、
懸案はまだまだ残っています。
ウォータージャケットの掃除が必須ですが、デコンプレバー側のカバーが
1.の三つのボルトで固定されているようで、
2.の線で取り外せるみたいです。そのうえで、この近さなら、3.のドレンコック内側まで
アクセスできてしまうんではなかろうか、と期待をしています。
このカバーの内部にはロッカーアームがあるようなのですが、
どうか、どうかそのロッカーアームまでバラさずに済むよう願っています。

…結局、すべてを外さないといけなくなるような、
最悪の予感もしますが…。










― その16 ―









250831-1




せっかくの連休だったのに、用事が重なって一日午前中しか時間がとれません。
正味二時間ほどしか作業できないので、この暑さだしもうやめとこうかな、と
気弱にもなってきますが、そんな気持ちでいては冬場の薪割りまでに
農民車を動かせなくなるのは必定。
なんとか気持ちを奮い立たせて、少しでも前に進みます。
今日は、エンジンヘッド部にあるデコンプレバーのついたカバーを
取り外す、それだけのことを最低限の目標とします。
ボルトは三つ緩めるだけ、これが出来なきゃ能無しです。





250831-2




ボルトは簡単に緩んでくれて、ちょっとカバーを揺らしてみると、
内部から真っ黒なオイルが垂れだしました。
写真の受けは慌てて差し入れたもので、その下には倍以上のオイルが
こぼれ落ちてしまったのですが、
ここにこんなオイルが詰まっていたとは予想外。
どうやらエンジンオイルらしいのですが、てことは、
オイルパンからの流路があるらしいのです。
うーむ、単純だと思っていたディーゼルも奥が深い。
いやいやそんなことより、ウォータージャケットに通ずる穴は
まったくなし。くっそー、ドレンコックは数センチ向こうなのに…。
エンジンオイルはきても、冷却水はきてなかったということか。





250831-3




一気にドレンコックまでたどり着こうとすると、
とても昼までには終わらないので、とりあえずカバーを洗うと、内側に

ER50

のエンジン形式がレリーフされていました。てことは、
他のエンジンとは部品の互換性がないんだな…やでやで。

エンジンオイルの流路は1.の穴のようで、中はオイルの残りで真っ黒。
左側の壁穴(見えていない)まで
繋がっているらしいです。

しかし、左側にある大きなナットがある筒状の部分がデコンプと関連している
ような気もします。この穴は、ピストン内の圧を逃がすための空気穴なのかも
しれません。とすると、この真っ黒なオイルはピストンの内部に入り込んでしまっている
エンジンオイルなのかも…。この現象が正常な、想定内なことなのか、
それともピストンリングが折れたのでオイルが漏れているのか。
はたしてどっちなんでしょうか。

継ぎ目には薄いパッキンが挟まっていましたが、劣化してポロポロ剥落。
広告のコート紙で代用できるような気もします。
型を写し取るのが面倒。
でもパッキンがあるということは、オイルがここに
入ってくるということを想定していて、したがって
ピストンリング等に異常はないのかも。

いろいろと推理はしてみますが、本当のところはピストンまで
分解しなければわからないのです。
そして、そんな部分までは分解したくないのが本音ではあります。
とても私の知識と腕がついていきません。





250831-4




なんにせよ、ドレンにまでたどり着くにはもう一段階、
ロッカーアームを取り付けてあるブロックを外さないといけないようです。
ドレンコックはそのブロックの下部にあるので、今度こそなんとかなるはず。

しかし問題のブロックを外すには、なんだか訳のわからない配管が
二本あって、そのうえでかいエアクリーナーが途轍もなく邪魔。
あと十分ほどしか時間がないので、この段階で汚れを落とせるだけ
落として終了することにしましたが、
二時間前の一枚目の写真とどこがどう違うのか……。
狭くて込み入った部分には歯ブラシも満足に届かず、
固着した汚れは灯油でもなかなか溶けてくれません。
そもそもケチって汚れた灯油を使いまわしているので、
きれいさっぱりとはいかないのですが…。

次ははずさないといけない配管をはずします。
ほんとにやりたくないけど、やらないといけません。
ああ疲れる。







― その17 ―








250906-1



九州のすぐ脇で台風が発生し、あまり大きくならないうちに
東へ去っていったおかげで、淡路島では風もなく雨だけ降って終わりました。
被害のあった場所もあるだけに幸運ではありますが、
そのうちひどいことになる場合もあるでしょう。

とにかく熱帯夜をまぬがれて、せんどぶりに(方言:ひさしぶりに)よく眠れて、
体調がいいので作業開始。まずは前回、仮止めしといたデコンプ部分を
外してみます。





250906-2




ロッカーアームとタペットが組まれたブロックは、
どうやらシリンダーヘッドを兼ねているようです。
つまり内部はまさに燃焼室で、ということはこいつはヘッドカバー……。
来てはいけない部分まで来たようですが、これを開けないと
冷却水の流路までたどり着けず、ドレンの掃除もできないので、
開けなければなりません。

作業的には1.~4.の、四本あるナットをはずせばいいだけですが……。





250906-3




その前に、7.の部品がヘッドカバーにくっついていて、しかも金属の配管が
なんかに繋がっているので、まずこの配管をはずさないといけません。
燃焼室に入るものは燃料と空気なので、エアクリーナーに関連してない7.は、どうやら
燃料噴射装置のよう。こいつを迂闊に触ってはならないことは、
おたけさんにも重々警告を受けていますので、7.とは反対側の
5.を外してみます。この金属配管は、要するに燃料配管でしょう。

しかし5.のナットを緩めようとすると、なんと
その燃料配管が一緒に曲がるじゃん!

あー、焦ったあ!
危うく配管を折るところだったぜ。

どうも5.の前に、6.のナットで配管をはずさないといけないようですが、
いったん5.を緩めると6.だけ緩めるのは難しいみたい。

作業が行き詰まりましたが、こういう時は
別の角度から攻めるのがいい、というのを経験的に学んでいます。
ということで、いつかは外さないといけないエアクリーナーを
外してみることに。
エアクリーナーのフランジ固定ボルトは、8.の配管を固定する部品と
共締めになっています。





250906-4




ひどいゴミと埃の堆積でフランジもボルトも埋もれていますが、
9.が上のボルト、10.が共締めボルト。
9.はラジエーターの台座とスレスレで、まっすぐなメガネレンチでは
無理な位置関係でした。

なんかレイモンド飛田の知恵の輪に挑戦してる気分。





250906-5




外して分解した湿式エアクリーナー。
エンジンを降ろす前には、カップにオイルが溜まってたはず。
どういうわけか、中はなにもありません。
そのオイルがこぼれるのが嫌で手を着けなかったんですが、
いったいどこにいったのでしょう。

なんかわかりませんけど、まあとにかく灯油でもかけときます。





250906-6




燃料噴射装置は触りたくないし、その反対側のナットは外せない、ということなので、
しょうがないので噴射装置側のナットを緩めてみたらば、
無事に外れてくれました。
これでなんとかヘッドも外せそう。





250906-7




11.と12.はロッカーアームで、タペット側の形状が
少し違うので、組むときに間違えないようにしないといけません。
バラさなけりゃいいんですが、デコンプのカバーがないとバラけてしまうんですよね…。
写真ではなんとかなってますが、この角度だと12.が
勝手に落下する状態です。





250906-8




ヘッドの内側、つまり燃焼室側。
13.と14.がプッシュロッドで、これも簡単に抜け落ちてしまいますが、
プッシュロッドは左右の違いはないようです……
と思います。実はよく確認してません。
てっきり同じだと思ってましたが、いまこうやって
書いてる最中に

「もしやロッカーアームのように左右で違うのでは」

という疑惑が脳裏に湧いてきました。

…違ってたらどうしよう。





250906-9




それはそれとして!

やっと冷却水の流路が見えました。
穴はどうやら17.と18.の三つ、下側の17.が完全に詰まっています。
こんなに完璧に詰まってて、しかも水が全然ない状態で、よくも
焼き付かなかったもんです。
いったいいつからこの状態だったのか、
燃料をケチって長時間エンジンを回さなくてよかった、と心底思います。
どケチでしみったれた性格でも、まれにいいことがあるもんです。

信じられませんが、真ん中のでかい穴は燃焼室。
こんなとこに辿り着こうとは思ってませんでした。
まさにエンジンの中心部ではないか…!





250906-10




ヘッドカバーとの間には分厚いガスケットが挟まっていました。
これは再利用できそう。
19.の穴からは黒いオイルが漏れていますが、
前回の写真250831-3にあるオイル流路と繋がっているんでしょうか。
エンジンオイルはすぐ横の四角い二つの穴にも
流れているはずなので、別の流路があるのはなぜなのか。
私には、まだちょっと理由がわかりません。





250906-11




まあそれもそれとして!
いよいよ冷却水流路をほじくってみます。
千枚通しとマイナスドライバーを使ってみますが、
そうやすやすと除去できる柔らかさでもありません。
かなり硬めクッキー、くらいですか。
内部がどうなってるかよくわかりませんが、開通した手応えがあったので
どうにかできたみたいです。
この夥しい堆積物はどうだ。
これみんな錆なのかなあ。





250906-12




ためしにフライホイールを回してみると、穴の奥にあった壁が
手前に出てきました。
おお、これはやはりピストンだったのか!
なんかほんとに信じられん……。

いやそれより、ピストンのカーボンもひどい堆積。
二つの四角い穴にも、カチカチの何かがくっついてて、
ドライバーでもビクともしません。
ハンマーを使えば砕けるのかもしれませんが、
本体に傷を着けたくもないので……いつかスクーターの調子が悪くなった際に、
整備屋でバルブに着いたカーボンを除去してもらったのですが、
その時に使ってた超強力パーツクリーナーが有効かもしれません。
値段が気になりますが、どうせまたパーツクリーナーを買わないといけないので、
たまにはそんな高いのを買ってもいいかも。

例の小穴からは、ピストンの動きとともにオイルが出てきました。
やっぱりエンジンオイルが押し出されて、各部を潤滑するシステムの
ようです。





250906-13




時間も迫ってきたので、開通したか確認するために、
上から灯油を流してみると、ちゃんと下の穴から出てくれました。

写真を撮るのを忘れてましたが、
250906-8で、プッシュロッドの間にある穴は17.に対応する穴。
そっちも同じように錆が詰まりまくっていたので同様に除去してます。
ヘッドも灯油をかけといて、あとは来週以降。

冷却系内部の錆取りをどうするか問題ですが、
狭すぎる上に複雑な形状でブラシはほとんど使えません。
筒状のシリンダー下側なんて絶対無理。
でもまあ、ただの水道水じゃなくて
クーラントを使えばちっとは防錆にもなるからそれでいいんじゃないか、
と考えています。

知らんけど。









― その18 ―










250920-1




分解したくないのになりゆきでどんどん部品が外れていってる
気がしますが、気のせいではなく確実に外れています。

エンジンとしての元の姿を想像しづらくなってきて、
あらためてはずみ車の存在感が半端ではない。
実際、重心がだいぶ後ろ側にきて、ちょっとした事でコケてしまう
予感がします。掃除もしにくいし、やっぱりはずみ車は外したほうがいい……しかし、
それを固定するバカでかいナットは、はずみ車が同方向に回るので緩められない。
という状況は以前に書きましたが、シリンダーヘッドを
外したところで、珍しく脳内にひらめきが。

「そっ、そうだ! ここはひとついい手段を思いついたぞ!」
「なっ、なんですかっ⁉」
「昔のマンガ界ではしばしば行われていたという方法……
―――ここはひとつ!」

プロのマンガ家に代筆を頼もう!

ボケをかますのもこれくらいにして。
いい手段とは、ピストンが下死点にあるときに、
シリンダーの中に適当なモノを入れといてからヘッドを取り付ける、
ということ……つまりピストンを動かなくしてしまうことで、
連結するはずみ車も動かなくしてしまおうという魂胆。
どうです?

早速ボアストローク(というのだろうか)を測ってみると、
約七十五ミリ。在庫にある適当な木片を探してみると、
五十五ミリの角材があったので、ちょうどに切るのも面倒だし
これでいいかと、まず周囲にある部品群をどけようと
して、かぶせてあるボロ布をとったところ…。





250920-2




ああっ、そうだった、外した部品の掃除がまだだった!
どっちを先にやろうかと考えましたが、方針転換して
今日は部品清掃に費やすことにしました。
トレーにのってるのはエアフィルター一式。

前回、中途半端に灯油で洗ったまま二週間ほったらかしに
してあったのですが、汚れはだいぶトレーに溜まっていました。
きっと異常な高温と灯油の溶解力が効いたのでしょう。
フラッシュのせいで、きれいなのか汚いのかわかりにくいですが、
これでもまだこびりついた汚れが隅々にあるので、
トレーをきれいなのに変えて掃除続行。





250920-3



エアフィルターはとりあえず清掃完了。
ヘッドまわりも同様に清掃していきます。
排気管の穴にはカーボンが硬く堆積してましたが、
灯油でどうにか取れるようです。
ヘッドのバルブまわりにこびりついたカーボンも、
千枚通しの腹を押し付けたら取れてくれます。

しかし冷却水の流路にある錆の粉はなかなか手強く、
奥のほうは歯ブラシでは当然届かず、
どこまで詰まっているのかもわかりません。
流路の穴は三つ、おそらく全部ドレンコックに
繋がっているはずなのに、一ヶ所から灯油を注ぐも、どの穴からも
出てきてくれません。きっと内部で詰まっているはず。
ドレンコックそのものは、千枚通しを出口から突っ込んで開通させたのですが、
曲がった流路には通用せず。

こうなったら、ブラックジャックが
ドライバーの気絶したレーシングカーをパンクさせたような
オバケ毛虫(あれはなんなんだろう)の小型のを用意するしかありません。
…わかりにくかったですね、要するに煙突ブラシの小さいのです。

うーん、はずみ車はもうちょっと先かなあ……。









― その19 ―






前回、はずみ車を固定するでかいナットを緩める妙案を
思いついたのですが、おたけさんから


フライホイールを外してはいけません、それを分解して固定してあるクランク軸を受けている

テーパーローラーベアリングには、クランク軸のクリアランス調整用のシムが入っています

壊したらもう部品はありません、またこれを外すことによってオイルポンプが駆動している

カム軸からつながっているシャフトが外れるので、位置合わせが間違っていればエンジンが焼き付きを起こします


という忠告を再び受けましたので、残念ですがこの邪魔ものを外す作業は
やめにします。この上は、この狭い隙間をなんとかして
掃除しなければいけません。それには、
もっと長くて小さめのワイヤーブラシがいるのですが、
あいかわらず仕事が忙しいのと、ガソリン代をケチっているせいで
なかなか買いに行けません。
だったらネットで買えばいいんですが、
現物を見て買ったほうがいいし……。





251004-1




というわけで、今日も二時間だけ清掃。
今週もまた休みは一日、しかも雨が降ってて手元が暗く、
卓上の照明スタンドがないと何も見えません。
老眼はひどいし。

黒くて丸いものはピストンヘッド。
排気ガスの煤とエンジンオイルが固まったカーボンが
一面にこびりついています。
先週から灯油を浸み込ませたぼろ布をひっつけて
おいたので、若干はやわらかくなっているでしょう。
千枚通しの腹と革鋤でおおまかに削り取り、ワイヤーブラシをかけたうえで、
灯油で濡らせた耐水ペーパーで擦っていきます。





251004-2




こんなもんでどうでしょう。
これですこしは調子が上がってくれればいいんですが、
気休めのような気もします。

さて、問題のはずみ車と本体の間にある汚れですが、
まるでビロードの繊維のごとく埃が堆積。
塗装に傷がつくのでマイナスドライバーは使いたくないのですが、
なるべく力をいれずにこそぎ取っていきます。
いっそのこと、全体を灯油に漬ければ楽なんですが、
そこまででかい桶もないし…。

汚いビロードは、予想外に柔らかかったのが幸い。





251004-3




案の定、はずみ車の下側に古歯ブラシが届かなくなりました。
全体的に軽くなっているので、横倒しにしてみましょう。
するとなんということでしょう。
黄色い塗料のついたバネワッシャーがふたつ落ちていました。
いったいいつ、どこから外れたんだろう?
どうもラジエーターを外した時に、取り付けボルトから
抜け落ちたような……。

そう重要なワッシャーでもないようなので、あとで確認することにして……
本体底面は、予想外にきれいな状態。
でも窪みや溝など、掃除しにくいところは汚れが堆積。

それにしても、木台は腐食が始まっているのでは。
相当硬い材のはずですが、革鋤で簡単に削れます。
しかもオイルまみれなはずなのに、カビまで生えてる……。





251004-4




おっと、まだオイルが残ってた。
オイルパンのドレンは緩めてなかったので、もっと残ってる可能性大。





251004-5




ここで時間切れ。
間違いさがしではありませんが、少しずつ汚れは取れてます。
フラッシュを使うと画面が白っぽくなるんでわかりにくいですが、
作業台に埃がどんどん積もっていくのです。

木台の底面には、エンジン固定ボルトの隠し穴や、謎のへこみが
何か所かあって、真っ平ではありません。
隠し穴はともかく、へこみが振動のためできたのか、
なにか理由があって加工されたものなのか、よくわかりません。
最後には、この木台を取り去って掃除しなければならないのですが、
いま取っちゃうとはずみ車が邪魔で、直立しなくなるので
このまま進めます。







― その20 ―






251012-1




今回は更新に悩むほどつまらない内容なのですが、
一応記録のために……。

前回、本体を横に倒したついでに、反対向きに起こしてみました。
手製の台はキャスター付きなので、台ごと信地旋回させればいいのですが、
すぐ横に自家用車が停まっててスペースが足りないのです。

見えているエンジンヘッドの反対側は、ボルト留めの蓋が全体に。
中にはクランクがあると思われますが、できれば開けたくありません。
まあ中身を見たい好奇心はありますが、いまは汚れ落としが優先なので…。





251012-2




はずみ車とエンジンの隙間は、十分に掃除できそうもありませんが、
やれるだけやってみます。
大小ふたつのプーリー、小さいほうはベルトテンショナーで、軸位置をずらすことで
発電・ラジエターファン兼用ベルトの張り調整します。
これは外しても問題なさそうなので、ステーごと外します。





251012-3




クランクの蓋は六本のボルト留めですが、上の二本は
たしか燃料タンクの固定と兼用なので、すでに外してあります。
蓋をとってもどうってことなさそうですが、
ここにもパッキンがあるはず。
きっと古くなってるだろうから、新規につくるのがいいのかなあ…。

クリップのついた金具は、クランクハンドルを固定するためのもの。
その金具を固定するプラスネジの回り止めにもなっています。

千枚通しが刺さっている穴は目的が謎で、ネジも切られていません。

作業時間が一時間では、たいして汚れも落とせませんでした…。










― その21 ―









251018-1




前回は一時間の作業でしたが、今日は一時間半。
どうせ大したことができず、むなしい日々が続きます。
あいかわらずはずみ車のの隙間はどうにも手が入らず、
妙な構造物が多くて細部にブラシが入らないのです。

前回写真の二枚目と同じかと思われるでしょうが、
今回のは真横からの。
軸部分の下側は、まだいっぱい黒いのが堆積・付着してますが、
どうやっても届きません。





251018-2




侵入角度を真下からに変えたらなんとかなるかも、
とひっくり返してみましたが、木台が邪魔してあまり状況が改善せず。
ならば木台を外してみるか、となると、はずみ車がつっかえて直立しなくなるし…。
どこまでも邪魔なはずみ車。





251018-3




四角い窪みが四つありますが、これはエンジンの台架にあたる
部品を固定するボルトのための座繰り穴。
通常は下向きなので汚れはひどくないようですが、
ここも狭くてうまくブラシが入らず。

「ええい、どうせあと一回ぐらいしか撃てないんだ!」

ばかに長いパーツクリーナーも尽きてきたので、手の届かないはずみ車基部と
座繰り穴に残りをすべて噴射することにします。





251018-4




隙間にカメラを入れて撮影。
やはりまだ隅々には汚れがあるようですが、
ひとまずこの辺で終わっときます。

しかし、なんでこんなに複雑な形状なんだろうか。
ただの円盤状ならもっと掃除が楽なのに…。





251018-5




裏側はこのへんで終わるとして、
次回はもっと複雑で汚れの酷い表側に移ることにします。
そろそろ液状ガスケットを買っとかなきゃなあ。





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